タイ最北の地、チェンライ。
前日に急遽日帰りでバンコクから行くことを決め、朝4時に起き空港へ向かった。
タイでの生活もあと僅か。カウントダウンが始まっている。1日も無駄にしてはならぬ、という謎の焦燥がこれまでになかった行動力を掻き立てる。
午前7時。空港から出た瞬間、ひんやりと冷たい空気に驚いた。
同じタイだが、バンコクとはだいぶ気温が違う。
バンコクでは暑さにやられた野良猫たちが涼をとるために、冷たい床を探し求めてコンビニや駅の前に集まり、まるで電池が切れたようにぱたりと横になって穏やかな顔で眠っている光景をよく見るが、チェンライにはそんな猫はいない。
涼しいからか、そこまでくつろげるほど安全ではないからなのかは分からない。
さて、チェンライは新旧の文化が入り混じった趣深い土地だが、決して人口は多くない田舎町だ。
空港からタクシーを走らせるが車窓から見えるのは田んぼ、古びた個人商店、雑草の生い茂った空き地といった具合だ。
ちなみに、タクシーは配車アプリGrabで捕まえ、運転手に1日チャーターさせてもらえないか交渉をした。1日2,000THBを1,800THBに値切って、旅の足を確保した。
第一目的地は、ワット・ロンクン。
チェンライ出身のアーティストが建築した白亜の寺院だ。真っ白な出で立ちがフォトジェニックだと、人気のスポットらしい。
この建物、なかなか物騒な装飾がなされていることでも有名。
そして、次の目的地はシンハーパーク。
タイで最も有名なビール会社、シンハーが運営する公園。なんと広さは東京ドーム270個分。
シンハーが運営するのだから公園のいたるところでビールが飲めると思ったら大間違いであった。見渡す限り、田舎のばあちゃんちを思い出すようなのんびりとした空気が流れる。気軽にビールを飲めるようなショップは、入口付近にあるレストラン以外にゼロなのだ。
この公園をレンタサイクルもしくはカートに乗って散策したり、動物の餌やり、ジップラインなどのアクティビティが楽しめる。
そしてせっかく最北の地まで来たのだ。
是非行っておきたいのが、ゴールデントライアングルだ。
ここはメコン川流域のタイ、ミャンマー、ラオスの国境が接する場所。
メコン川をスピードボートに乗って、ミャンマーやラオスに入国することができるというので、さっそくチケットを購入した。
あいにくミャンマーは情勢が不安定で入国できなかったが、ラオスはパスポート無しで入国することができるらしい。
スピードボートを飛ばしてミャンマーを見に行く。
明らかに綺麗じゃない色をしたメコン川のしぶきがひっきりなしに降りかかってくる。
そしていよいよ見えてきたミャンマー!
このままUターンして、今度はラオスを目指す!
ラオスは莫大なチャイナマネーが流入しており、建設ラッシュだ。
対岸の国に対して、どうだすごいだろう!とマウントを取るかのごとく、ホテルなどの建物がにょきにょきと生えている。
そして、いざラオスに入国。
本当にパスポートも何も求められない。港で紙切れ1枚をもらっただけだ。緩い。
ただ入国できるといっても、港に併設された公園を散策するくらいしかできず、市内に入っていけるわけではない。国境付近だけ開放されているようだ。
せっかくなのでビアラオ(ラオスビール)をいただく。
入国すると目の前にアウトレットのような雰囲気が広がっているが、営業している風には見えない。店内を見てみたが、ブランド物らしきものはおいていない。
入国早々、未営業の偽アウトレットに出迎えられ、中国マネーで成長するいびつな東南アジアの実態を垣間見た気がした。
そして、進んでいくと公園が広がっているが・・・
ここにも漂う中国感。
実はこの公園で、犬に追いかけられて冷や汗をかいた。
ラオビールを飲みながら歩いていたら、目の前に誰かの飼っているパグがぽかぽか陽気を楽しんでいた。飼い主はリードを握っていない。パグは自由の身だ。
これまでの人生で犬に追いかけられたことなどない。
可愛いなぁと思いパグに顔を向けると、ばちーっと目があった。
嫌な予感がした。
わんわんわんわん!!!!!
ずんぐりとしたパグはけたたましく鳴き、猛スピードで私のほうに走ってきた。
私も猛スピードで走り出した。
ずんぐりとした体を揺さぶって目の血走ったパグがこちらに迫ってくる。
逃げろ!噛まれる!
足元にパグが見えて、まずい・・と思ったところで、状況に気づいた飼い主がやっと追いかけてきてリードをつかんでくれた。
危なかった。。。
疲れ果てた私は、これ以上ラオスにいてもやることもないので、さっさとタイに戻ることにした。
10年に一度あるかないかレベルの全速力を出し切ったので、お腹が減った。
陽も落ちてきたので、ナイトマーケットで腹ごしらえをした。
ほぼすべてのお店が、チムチュムというタイ風鍋を出していたので、それをいただいた。温かい出汁が疲れた体に染み渡った。
他にも、ワット・ロンスアテンやショッピングセンターなどを回り、チェンライを満喫した。
チェンライは見どころがコンパクトにまとまっており、タクシーをチャーターすれば1日あれば十分楽しめる街であった。
夜9時半のフライトでバンコクへ戻る。
チェンライ空港はカフェやレストランもあまりない、必要機能を最小限に抑えた空港だ。
チェンマイはコムローイ祭り(ランタン祭り)など世界的に有名なイベントもあり、各国から観光客が押し寄せる人気観光地だが、チェンライはそれと比べるとマイナーどころだ。
そのためか、観光地もコンパクトにまとまっており、1日でも十分に楽しむことができた。
まだチェンライに行っていない方は、ぜひ日帰りでも行ってみてほしい。